「Syno × おもてなし迷惑」謹賀新年、新たな章の幕開け

日英Webメディア「おもてなし迷惑 -Omotenashi GAP-」は、日本人が外国人に対して「よかれ」と思って行った「おもてなし」の行為が、悲しいかな「迷惑」と解釈されてしまうアイロニー(皮肉)(=「おもてなし迷惑」)をテーマに、2019年の3月より連載を開始しました。

観光地「鎌倉」を舞台に、訪日外国人観光客が体験する「おもてなし迷惑」を中心に物語を展開して参りましたが、この度の新型コロナウィルス感染拡大の影響により、インバウンドを含む観光業は多大なる被害を受ける中、本メディアの連載を一旦中断し、今後の方向性を模索しておりました。

そんな中、観光業界に関わる方とお話をするうちに、終わりが見えない現状に対して真摯に向き合い、with/afterコロナを見据えて、従来の体制を見直し、前向きに準備を進めている方も多いことに気づかされます。

(参考:京都の観光施設へのインタビュー記事

本メディアも、そういった前を向いて着々と歩を進める人に対して、何か「おもてなし迷惑」として応援できることはないかと考え、「おもてなし迷惑第二章:北欧発鎌倉スタートアップ編」として、2021年より新たに連載を続けていくことを決定しました。

第二章は、実際に鎌倉に拠点を構える北欧発ベンチャー企業Synoと連携し、Synoが2021年より新たに掲げる「アンケートで社会課題を解決するSurvey for Good」というミッションの下、主人公の表なし子が悪銭苦闘しながらも自身の経験を活かしながら、グローバルな環境で観光業の課題を解決するためのアンケートシステムを構築していく、というストーリーとなります。

グローバルの職場で起きる日本人と外国人との「おもてなし迷惑」に焦点をあてながら、観光業の復興に向けて前向きに奮闘する様子を通じて、笑いと勇気をお届けすることができるエンターテイメントを目指します。

引き続き何卒宜しくお願いいたします。

2021年1月1日

おもてなし迷惑制作チーム一同

プライバシーvs おもてなし

プライバシーvs おもてなし

あなたがもし旅館のオーナーになったとして、ゲストが宿に到着する前にどのような“おもてなし”ができると思いますか?

事前のおもてなしとして、歓迎の想いを込めてゲストの名前を入口の前に表示する旅館は多いのではないでしょうか?

今回は、個人情報の取り扱いが厳しくなっている現代において、海外からのゲストにとってこの行為がどう解釈されるのかを考えていきたいと思います。

日本同様に、プライバシーに関する考え方は文化や人によってさまざまですが、一般的に欧州の方が、プライバシー関して厳しい見解を持ち、その次が米国と言われています。海外からのゲストにとって、自分の名前が表示された歓迎ボードは、印象に残るユニークな経験として考える人がいる一方、中には少し気味が悪いと感じる人もいるでしょう。誤解を避けるために、まずはゲストに対して事前にその旨を伝えるのがいいかもしれません。そうすることで、少なくともゲストの予期せぬ不快な驚きは回避することができます。予約ページにその旨を伝える一言を入れるか、ホテルのウェブサイトに英語で説明を入れるだけでも十分でしょう。

事前の通知よりも効果的なのが、ゲストに実際に聞く事です。予約時に、これから来るゲストに対して、「当施設の歓迎ボードに、お客様のお名前を表示してもよろしいですか?」と聞いてみましょう。この問いかけにより、おもてなしの心とゲストのプライバシーに対する配慮を両方示すことができます。相互にメリットがでますよね。

上記以外に、ゲストの名前に関するプライバシーの問題はどういったものがあるのでしょうか?例えば、夕食のテーブルや部屋の前にゲストの名前を表示する。この行為も事前に確認しておいた方がいいかもしれません。ゲストの中には、自分の名前ではなく部屋番号や部屋名を代わりに使ったほうが安心するかもしれません。

またプライバシーをさらに気にするゲストは、自分が提供した個人情報が将来どのように使われるのかを考えます。例えば、その情報がどのくらいの期間保管されるのか?それを使ってメールが送られてくるのか?第三者に対して開示するのか?疑問を解消するために、少なくとも日本語と英語でプライバシーポリシーを各部屋に用意しておくことをお勧めします。

結論、受け入れ側がゲストのプライバシーに対する配慮の姿勢を見せる方が、名前を旅館の前に張り出すよりもはるかに良い「おもてなし」でしょう。

日本旅館での朝食のおもてなし迷惑

日本旅館での朝食のおもてなし迷惑

|訪日観光客が求める朝食サービスは「選択できること」

旅先での旅館の朝食、あなたはどんなものを期待しますか?白米に味噌汁、焼き魚や漬物や納豆。充実した和朝食を食べられることが旅館の楽しみでもあります。最近ではホテルの口コミレビューサイトでは朝食のクオリティーがスコア化されるほど、宿泊先を選ぶ上で「どんな朝食か」というのは重要な判断材料になっています。

欧米でも食事の中で朝食がもっとも大切な食事だというのはよく言われています。そのため、訪日観光客にとって旅館での朝食が日本滞在での悪い記憶として残ることがよくあり、その旅館への評価、口コミへのレビュー、そしてリピート率に影響してきます。

外国人は日本の朝食の何が嫌いなのでしょうか?

どうしたら外国人により満足してもらえる朝食を提供できるのでしょうか?

その答えのカギは外国人の好みに合わせて朝食を提供することにあります。まずは、どのように日本の旅館が朝食を提供しているのか見てみましょう。

ケース1 お客さん全員に同じ食事を提供する

 利用客がどこ出身であろうとも全員に同じ食事を提供することは、旅館側のオペレーションにとってはとても都合が良いでしょう。白米、みそ汁、焼き魚、納豆を食事の好みに関係なく提供されるというのは、日本人であれば誰しも経験したことがあると思います。

このシステムは訪日外国人にとってどうなのでしょうか?

日本食の”押し付け”は厳禁。外国人にとっては辛い思い出に。

自分の国では食べられないものを試すことができるとは言えますが、逆を言えば、日本食が外国人の多くの口に合わないかもしれないことを考慮していないとも言えます。

その結果、朝食のたびに大量の納豆が食べ残すことの罪悪感を感じ、利用客たちは日本の朝食がどれだけひどかったかという思い出と共に自国に帰ることとなります。

ケース2 海外からの利用客に洋風の朝食を提供する

外国人は納豆や魚の干物が嫌いで、自分たちの国のものに似ている食べ物を好むとよく言われます。このことから、朝食に洋食を選ぶことができるホテルや、外国人全員に洋風の朝食を提供しているホテルがあります。これこそが言われなくても何が食べたいかを予測して提供する、日本の「おもてなし」のもっとも良い部分だと外国人も認識し、日本人も自負しているところではないでしょうか。しかし、この「おもてなし」精神には2つの問題があります。

外国人向け「朝食のおもてなし」の落とし穴

1つ目は、外国人観光客が旅館での体験が限定されることです。良かれと思って自分の国でも食べられる食べ物を提供することで、利用客は日本らしいものを体験する機会を減らされたと感じることがあります。

2つ目は、外国人が日本で食べる洋食に満足しない可能性があることです。日本人が海外で日本食を食べたときに、クオリティの低さに不満を感じるのと同様に、外国人もまた日本で食べる洋食のクオリティに不満を感じる場合があります。外国人に洋食を提供すると、卵の焼き方1つでも不満の原因になるかもしれません。

訪日外国人に提供する朝食はどうしたらいいのか?

西洋では朝食というものは、焼き立ての卵からパンケーキのトッピングまで個人の好みがそれぞれ決まっていて、旅館での朝食は自分で選びたいものなのです。

つまり、日本人と外国人両方への「おもてなし」をさらに良くするためには、利用客に聞くことが簡単な解決策となります。これは、どの旅館も注文が入ってから好みに合わせて、卵とパンケーキの調理をするべきと言っているわけではありません。利用者が簡単なメニューの選択肢の中から自分の好みに合ったものを注文できる仕組みを作ってあげることが大切です。例えば、焼き魚を頼んで、納豆を頼まない、などをできるようにするということです。

このメニューはチェックインのときに渡すこともできますし、朝食会場に来てから渡すこともできます。頻繁に、もしくは毎日メニューを変える旅館の場合は、「季節の焼き魚」や「旬の野菜の漬物」のような簡単な説明書きを載せるだけで十分です。訪日外国人が自分で何を食べるかを選ぶことによって、日本の本物の食事を体験することもでき、口に合わないものを残すうしろめたさを感じることをなくすこともできるのです。

おもてなし迷惑とは

おもてなし迷惑とは

近年の訪日外国人の急増に伴い、外国人がさまざまな場面で日本流のホスピタリティ「おもてなし」を体験する機会が増えています。日本人が普段当たり前としている例えば飲食店提供される温かいおしぼりや、お店できれいに包装されたお土産といったサービスは、外国人にとっては非常に珍しく、満足度が高い経験になるようです。

では、果たして日本のおもてなしは、万国共通で賞賛される行為なのでしょうか?

おもてなし迷惑とは?

本WEBメディアのテーマとなっている、「おもてなし迷惑」は、「よかれ」と思って行った「おもてなし」の行為が、悲しいかな「迷惑」と解釈されてしまうアイロニー(皮肉)を、“ありがた迷惑”をもじった言葉で表した造語です。日本人同士ではあまり発生しにくい現象ですが、異なる価値観を持ち、日本流のおもてなしに慣れていない外国人との間には起こりやすく、時にはそれが誤解や不満となってしまうケースもあります。

おもてなし迷惑をさらにご理解頂くために、温泉旅館のチェックイン時の例をご紹介します。日本の温泉旅館の多くは、旅先の疲れを癒してもらうために、チェックイン時に部屋の案内の前にロビーでお茶やお菓子を提供してもてなします。このおもてなしの行為が、チェックインをなるべく早く済ませ、直ぐにでも観光しに外出することに慣れている外国人観光客にとって、無理やり休憩させられて迷惑と解釈される可能性があるのです。

推測せずにまずは、聞く。これ鉄則。

日本では、ゲストのニーズを言われる前に先読みすることが、良いホスピタリティ、つまりおもてなしの行為とみなされます。一方で、海外からのお客様の多くは、ニーズを聞かれることを基本的に期待しています。ゲストを受けれいる側が、日本人の物差しで考えた結果、意図に反してゲストに不愉快な思いをさせてしまったり、「アメリカ人は….だから」という根拠のない推測をベースに、日本人には普段しない行為をすると、日本に長く住む外国人や、日本流のおもてなしを期待する観光客をがっかりさせることになります。こういった状況を避けるためには答えを勝手に推測せずに、まずはお客様に聞く。これが鉄則です。異文化に暗黙の了解を求めるのは危険です。

日英ウェブメディア「おもてなし迷惑-Omotenashi Gap-」とは

「おもてなし迷惑- Omotenashi Gap」は日本在住15年以上の日本に対してロイヤリティが高い米国出身ライターを中心とする在留外国人ライターグループが、日本人とは違う視点で、「日本のおもてなしと外国人が求めるサービスとの差(ギャップ)」に関する情報を発信する日英Webメディアです。

悪気のない迷惑行為であるおもてなし迷惑には、そのアイロニー(皮肉)が本来持つユーモアが存在しています。そこには、悲しいけど、少し笑ってしまうようなシュールな要素があり、その部分を、漫画やブログという媒体を通じてお伝えしていきます。そして、おもてなし迷惑予備軍の方には明日からすぐにでも使えるような役に立つ情報を、訪日経験者やこれから日本への旅行を楽しみにしている外国人観光客にとって、「おもてなし迷惑」が本来は日本人の愛情こもった心遣いであるという真実をお伝えできればと思い日英のメディアになっています。

本メディアが、異文化間にある尊重されるべき根本的な違いへの理解を深め、文化の違いがもたらす避けられない誤解や皮肉をユーモアに変えれるような多様性を重んずる社会に少しでも貢献できますことがこの上ない喜びです。

おもてなし迷惑チーム一同、これまで蓄積してきたネタを振り絞り、エンターテイメント性があり、役に立つ情報を発信できるよう頑張ります。

おもてなし迷惑運営会社 グラスチャイルド コンサルティング代表取締役 長野 草児