プライバシーvs おもてなし

プライバシーvs おもてなし

あなたがもし旅館のオーナーになったとして、ゲストが宿に到着する前にどのような“おもてなし”ができると思いますか?

事前のおもてなしとして、歓迎の想いを込めてゲストの名前を入口の前に表示する旅館は多いのではないでしょうか?

今回は、個人情報の取り扱いが厳しくなっている現代において、海外からのゲストにとってこの行為がどう解釈されるのかを考えていきたいと思います。

日本同様に、プライバシーに関する考え方は文化や人によってさまざまですが、一般的に欧州の方が、プライバシー関して厳しい見解を持ち、その次が米国と言われています。海外からのゲストにとって、自分の名前が表示された歓迎ボードは、印象に残るユニークな経験として考える人がいる一方、中には少し気味が悪いと感じる人もいるでしょう。誤解を避けるために、まずはゲストに対して事前にその旨を伝えるのがいいかもしれません。そうすることで、少なくともゲストの予期せぬ不快な驚きは回避することができます。予約ページにその旨を伝える一言を入れるか、ホテルのウェブサイトに英語で説明を入れるだけでも十分でしょう。

事前の通知よりも効果的なのが、ゲストに実際に聞く事です。予約時に、これから来るゲストに対して、「当施設の歓迎ボードに、お客様のお名前を表示してもよろしいですか?」と聞いてみましょう。この問いかけにより、おもてなしの心とゲストのプライバシーに対する配慮を両方示すことができます。相互にメリットがでますよね。

上記以外に、ゲストの名前に関するプライバシーの問題はどういったものがあるのでしょうか?例えば、夕食のテーブルや部屋の前にゲストの名前を表示する。この行為も事前に確認しておいた方がいいかもしれません。ゲストの中には、自分の名前ではなく部屋番号や部屋名を代わりに使ったほうが安心するかもしれません。

またプライバシーをさらに気にするゲストは、自分が提供した個人情報が将来どのように使われるのかを考えます。例えば、その情報がどのくらいの期間保管されるのか?それを使ってメールが送られてくるのか?第三者に対して開示するのか?疑問を解消するために、少なくとも日本語と英語でプライバシーポリシーを各部屋に用意しておくことをお勧めします。

結論、受け入れ側がゲストのプライバシーに対する配慮の姿勢を見せる方が、名前を旅館の前に張り出すよりもはるかに良い「おもてなし」でしょう。